外国人材の話題は、この数年で一気に“当たり前”になりました。
人手不足、定着、支援体制、制度改正。どれもニュースで見かける言葉です。
でも、現場の空気は同じではありません。
「もう外国人材なしでは回らない」
「話は聞くけど、正直まだピンとこない」
同じ制度、同じ日本。なのに温度差が出る。この原因は”企業の意識差にある”と考えてしまいがちですが、
実際に進む・進まないを分けているのは、たいてい市場の構造、もっと言えば、会社の努力だけでは動かしにくい条件が重なっていることにあります。
本記事は、営業論や定着論に入る前に、まず「前提の地図」を描くためのものです。
外国人労働者数は増えている。けれど、増え方は均等ではない
差を生むのは“姿勢”ではなく“配置”
外国人労働者数は増えています。ですがその広がり方は、地域によって様々。
ある地域では「受け入れが当たり前」になり、別の地域では数年前から景色が変わらない。
多くの場合その原因は、企業の積極性や意識の違いではありません。
企業の気持ちより先に、“市場の配置”が決まっている。
まずは、ここを押さえたいところです。
差を作る要因は、大きく3つ。
① 需要が生まれやすい産業が集積しているか
「検討」ではなく「現実」になっている地域がある
製造、介護、外食、宿泊、農業。
慢性的に人手不足が起こりやすい産業が地域の中心にある場合、外国人材は「選択肢」ではなくなります。
現場に必要なのは、理念より人員。
だから検討は早い。話が進むのも自然です。
反対に、現業比率が低い地域や、産業の集中が弱い地域では、必要性自体が表に出にくい。
“導入が進まない”というより、そもそも「課題として成立しにくい」と言ったほうが近いでしょう。
② 労働市場にどれだけ余裕が残っているか
“回っているうちは、優先順位が上がらない”
同じ業界でも、地元採用がまだ成立している地域はあります。
この場合、外国人材は「重要だが急がない課題」になってしまう。
現状が回っているぶん、社内で上位に来ないのです。
一方、求人が埋まらず欠員が事業継続に直結する地域では、話が早い。
空気が変わるのは、危機の深さが違うからです。
③ 学習環境と経験値が地域に蓄積されているか
“制度の難しさ”は、経験の有無で変わる
受け入れが進んでいる地域には、過去に受け入れた企業が一定数います。
これが大きく影響してくるのです。
経験者がいると、制度や運用の知恵が地域に残ります。
行政・商工団体・同業ネットワークで情報が回り、「相談先がある」「やり方が分かる」という状態が自然にできる。
逆に、受け入れ経験が少ない地域では、制度が“難しいもの”としてハードルが高く感じます。
検討が止まるのは、抵抗感というより運用の想像ができないからです。
つまり、受け入れの差は、企業努力の問題ではありません。
「必要性が立ち上がりやすい構造があるか」の違いです。
業界によって、必要性の生まれ方はまったく違う
人手不足の“質”が、意思決定の速度を決める
受け入れがスムーズな業界には共通点があります。
それは、人手不足が「一時的な穴」ではなく、長期の構造問題として扱われていることです。
「来年も再来年も、国内人材だけでは埋まらない」——この前提が、現場と経営の両方に共有されている状態です。
受け入れが進みやすい業界
製造、介護、外食、宿泊、農業。
このあたりの分野は、必要性が立ち上がるのが早い。
理由はシンプルです。
欠員が「困る」で終わらず、稼働が止まるから。
- ラインが回らない
- 提供数を減らす
- 営業時間を短くする
- 受け入れ枠そのものを絞る
こういう形で、売上や運営に直結してきます。
だから外国人材は「余裕があれば」ではなく、「続けるために避けて通れない前提」になりやすい。
結果として、制度理解や現場調整にハードルがあっても意思決定が前へ進みます。
必要性の圧が強いためです。
判断が揺れやすい業界
一方で、建設・物流・小売などはブレやすい面があります。
ここで効いてくるのが、仕事量の変動です。
繁忙と閑散の差が大きく、受注や物量で人員計画が揺れる。すると判断がこうなりがちです。
「将来的には必要だが、今すぐではない」
これは固定的に人を抱える決断がしにくい、という構造の問題です。
さらに同じ“人手不足”でも、中身が違います。
通年で足りないのか、繁忙期だけ足りないのか。欠員の影響が売上に直結するのか、品質に響くのか。
この違いがあるほど、社内の温度差も生まれやすくなります。
そもそも配置先が少ないケース
もう一つ、別タイプがあります。
事務系中心の業種、専門職比率が高い分野、現業部門が少ない地域です。
ここで受け入れが進まない理由は、抵抗感ではありません。
業務構造上、活躍できるポジションが限られているからです。
つまり、「進まない」のではなく、
議論の入口に立てる会社が少ないという見方のほうが近いでしょう。
同じ“人手不足”でも、業界ごとに「不足の質」が違います。
そして、その違いが意思決定の速さを決めています。
- 慢性×稼働直結 → 決断は早い
- 変動×計画が揺れる → 検討は長引く
- 配置先が少ない → そもそも議論が立ちにくい
企業姿勢の差ではなく、必要性が立ち上がる構造の差です。
地域差は「県」ではなく「産業の集まり方」で起きている
見るべきは“県”より“産業エリア”
外国人材の受け入れには、確かに地域差があります。
ただ、その差を「都市部か地方か」「この県は進んでいるか」で語るのでは不十分です。同じ県内でも、エリアが変わるだけで温度感がまるで違うことがある。
中心市街地では話題にすらならないのに、隣の工業地帯では「もう外国人材なしでは回らない」。そんな並立が普通に起きます。
違いを作るのは行政区分ではありません。
どの産業が、どの程度まとまって存在しているか。つまり「産業の集まり方」です。
集積があると、課題が“共有”される
工業団地が集積するエリアでは、製造の人手不足が共通課題になりやすい。
個社の悩みではなく、「この辺の会社はみんな困っている」という状態になるわけです。
この“共有”が生まれることで、情報が回り、比較が始まり、判断が前に進みます。
- 近隣企業が受け入れを始める
- 受け入れ手続きの相場感ができる
- 住居や送迎などのノウハウが溜まる
- 「どこに相談すればいいか」が見える
結果として、受け入れは「特別な挑戦」ではなく、現実的な手段として扱われやすくなります。
介護施設や観光業が集中する地域でも、同じ現象が起きます。
たとえば観光地なら繁忙期の稼働維持が至上命題になりやすく、介護ならシフトが回らないことが直接的なリスクになります。こうした業種が面として集まっているほど、必要性の立ち上がりが速くなる傾向があります。
集積が弱いと、必要性が“見えにくい”
逆に、産業の集積が弱く、地元採用がまだ機能しているエリアでは、必要性が表に出にくい現状があります。
人が足りない会社があっても、それが地域全体の共通課題にならず、「うちだけの問題」として埋もれがちです。
進まないのは消極的だからではありません。困っていないから急がない。それだけの話です。
「導入しない理由」が感情ではなく、状況そのものにあるケースが多い。
県単位だと、打ち手がズレる
県単位で一括りにすると、需要の芽を見落とします。
同じ県でも、工業地帯・観光地・ベッドタウン・農業地帯では、市場の条件がまったく違うからです。
現場の温度差は、もっと細かい粒度で起きています。
だから見るべき単位は「県」ではなく、産業エリア。
どこに集積があり、どこで必要性が立ち上がっているのか。ここを押さえるだけで、営業の当て方も、提案の中身も、精度が一段上がります。
「進む・進まない」は、要因の“掛け算”で決まる
足し算ではなく、噛み合った瞬間に動き出す
受け入れが進むかどうかは、理由が1つで決まるものではありません。
産業構造、人口動態、求人倍率、過去の受け入れ経験、行政施策、周辺インフラ。こうした要素が重なった結果として、地域や業界ごとの温度差が生まれます。
そして厄介なのが、これらが足し算ではなく掛け算で効く点です。
条件が2つ3つそろった瞬間に一気に動く一方、どこか1つが欠けるだけで止まる。受け入れの判断は、そのくらい「噛み合わせ」に左右されます。
たとえば、人手不足が深刻でも、運用イメージが持てなければ止まってしまう。
「採用はできそうだが、現場でどう回すのか」「誰が教育するのか」「生活面の支援はどこまで必要か」——このイメージができないと、必要性があっても前に進みません。必要性が強いほど、本来は急ぎたいのに、詰まるときは詰まります。
逆に、制度理解が進んでいても、必要性が弱ければ優先順位は上がりません。
制度を知っていることと、導入する理由があることは別物です。現場がまだ回っている、採用がまだ成立している、欠員の影響が限定的。こうした状況では「勉強はしたが、今ではない」に着地しやすくなります。
さらに、住居・移動手段・生活支援といった周辺インフラの有無も大きい。
受け入れは採用で終わりません。生活が回らなければ、就労も回らない。だからこそ、家が確保できるか、通勤手段はあるか、相談できる窓口はあるか——こうした“職場の外”が、意思決定に直結します。
もう一つ、見落とされがちなのが「周囲の経験値」です。
受け入れ経験者が近くにいて情報が回る地域では、運用の見通しが立ちやすい。紹介会社・支援機関・行政の動きも含め、相談先が見えるからです。逆に、前例が少ない地域では、同じ制度でも難易度が跳ね上がります。分からないことが多いほど、意思決定は慎重になるのが自然でしょう。
ここまでをまとめると、重要なのは“態度”の評価ではありません。
「進んでいない=遅れている」と裁くより先に、見るべきものがあります。
今どこがボトルネックになっているのか。
必要性なのか、運用設計なのか、周辺インフラなのか、地域の経験値なのか。
この見立てができると、打ち手は一気に現実的になります。
市場を理解すると、打ち手の選び方が変わる
同じ提案を、どこでも使うと外す
市場を俯瞰すると分かります。
どこでも同じアプローチが通用するわけではありません。
外国人材の受け入れは、いわば「段階」があります。
そして段階が違えば、刺さる話も変わります。制度説明をしても響かない市場に、制度説明を続ける。逆に運用に困っている市場に、導入メリットだけを語る。これが一番もったいないのです。
受け入れが進んでいる市場で起きていること
すでに受け入れが進んでいる地域・業界では、関心が移っています。
「採用できるか」から「どう定着させ、どう運用するか」へ。
このフェーズでは、制度の話は“前提”になりやすい。
必要なのは、現場で回る形に落とし込む設計です。
たとえば、論点はこう変わります。
- 配属後の立ち上げを誰が担うか
- 教育・OJT(現場指導)をどう仕組みにするか
- 日本語レベル差がある前提で、作業標準をどう整えるか
- 住居・通勤・生活面の相談をどこまで支えるか
- トラブル時の一次対応を誰が持つか
つまり、「採用」ではなく「運用の品質」が評価される段階です。
この市場に制度説明だけを投げても、“今それじゃない”になります。
必要性がまだ顕在化していない市場の難しさ
一方、必要性がまだ顕在化していない市場では、導入を急かすほど逆効果になりやすい。
ここで響きにくいのは「今すぐやりましょう」という圧です。
なぜか。
現場がまだ回っている、採用もまだ成立している、欠員が致命傷になっていない。こうした状況では、導入は「重要だが急がない話」に分類されやすいからです。
この市場で効くのは、将来の選択肢として理解を深めてもらう関わり方です。
人口動態や業界動向を共有しながら、「いつ頃、どんな課題が出そうか」を一緒に整理する。ここから次の検討が始まります。
具体的には、いきなり制度の細部に入るよりも、
- 今の採用がいつまで成立しそうか
- 欠員が出た場合、どの業務が止まりやすいか
- 外国人材を入れるなら、どのポジションが現実的か
- 受け入れに必要な準備は何か(住居・教育・体制)
こうした“見通しの整理”のほうが前へ進みやすい。
導入の説得ではなく、意思決定の準備を一緒に作るイメージです。
市場理解は、営業効率のため“だけ”のものではありません。
「今は何を伝える段階か」を見極めるための土台でもあります。
同じ提案を、どこでも使うのは効果的とは言えないのです。
逆に言えば、段階に合わせて話を変えれば、無理に押さなくても前に進みます。ここが市場理解の一番の利点です。
全体像を知ることが、次の議論の土台になる
外国人材市場は拡大しています。
ただし、その広がり方には、業界・地域ごとに明確な偏りがあります。ここを見落とすと、「同じ制度なのに話が噛み合わない」状態が起きやすくなります。
この前提を共有しないまま、営業や定着、支援の議論を進めると、施策がズレ、期待もズレます。結果として、現場に負担だけが残りやすい。
必要性がまだ弱い市場に“運用の高度な提案”を投げてしまったり、逆に受け入れが進んだ市場に“制度の概要説明”だけを繰り返してしまったりします。
まず必要なのは、「今、どこで、どんな状況が生まれているか」を、感覚ではなく構造として整理することです。
受け入れが進む地域には、進むだけの条件がある。進まない地域にも、進みにくいだけの理由がある。そこを“姿勢”や“意識”で裁かず、市場条件として捉える。これがスタート地点になります。
全体像が揃ってはじめて、営業戦略も支援設計も、現実的な線を引けるようになります。
誰に何を伝えるべきか、どこに時間を使うべきか、どのボトルネックから崩すべきか。打ち手の選び方が変わるのは、この地図があるからです。
本記事が、その共通認識を整えるための材料になれば幸いです。
そして次の段階では、「市場ごとに、何を武器にするか」「どこから提案を組み立てるか」を具体化していく必要があります。地図を持った上で、ようやく戦略の話ができます。
自社でアウトバウンド営業を導入したいけどリソースが足りない。そのような課題をアウトバウンドセールスの専門家が解決します。

シンキカイタクの仕組み
①貴社のための専属チームを組成
営業戦略コンサルタント、作業の実行部隊、データアナリストの貴社専属チームを組成します。
②最適なターゲットの選定、アピール文言の作成
専任コンサルタントがオンラインでの詳細ヒアリングをもとにターゲットの選定、アピール文言を作成します。
③密なコミュニケーション
貴社の営業部隊として密なコミュニケーションを取りながら営業活動を行います。
④PDCAサイクルの継続
中間・月次MTGにて振り返りを専任コンサルタントと行います。コンサルタントが次月への改善策を提案いたします。
サービス開始までの流れ
- お問い合わせ
- 課題ヒアリング・ご提案
- ご契約・サービス提供開始
- 改善提案・伴走支援
お問い合わせ
まずは、お問い合わせフォームよりご相談ください。ご相談内容を確認したあと、担当者より1営業日以内にご連絡いたします。
