BtoBビジネスにおいて、「顧客数の拡大」と並んで重要なのが、「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)の最大化」です。
その鍵を握るのが、アップセルとクロスセル。
新規顧客の獲得には注力しているものの、既存顧客への深耕提案が属人化している・・そんな企業は多いのではないでしょうか。
この記事では、BtoB特有の商習慣を踏まえながら、アップセル・クロスセルの意味から実践的なアプローチ、注意点までをわかりやすく解説します。
アップセルとクロスセルの違い
アップセルとは、既存顧客に対して、より高価格・高機能な商品・サービスを提案することです。
カフェに例えると、普通のカフェラテを注文したお客様に対して、
「+50円で豆乳に変更できます」
「キャラメルソースを追加すると、よりリッチな味わいになりますよ」
とおすすめするようなイメージです。
一方、クロスセルは、顧客が現在利用している製品・サービスに加え、関連する製品・サービスを提案する手法を指します。
この場合、カフェラテを注文したお客様に対して、
「本日のケーキとセットにすると100円お得です」
「一緒にサンドイッチはいかがですか?」
といった提案をするようなイメージになります。
アップセルおよびクロスセルは、既存顧客の購買単価を引き上げるという直接的な収益向上につながるのみならず、
複数の選択肢を提示することで、顧客満足度の向上にも寄与する施策です。
また、これらの戦略は、新規顧客を獲得するための広告施策やプロモーション活動と比較して、一般的にコスト効率が高いとされています。
一説では新規顧客を獲得するためには、既存顧客への追加提案に比べて約5倍の労力が必要とも言われており、その意味でも、アップセル・クロスセルは効率的かつ実効性の高いアプローチであると言えるでしょう。
アップセルやクロスセルは新しい概念ではありませんが、近年これらの手法に注力する企業が増加しています。
背景には、営業活動における既存顧客の重要性の高まりがあります。
従来の日本のBtoBビジネスでは新規開拓が主軸でしたが、情報の飽和と競争激化により、新規顧客の獲得コストは上昇傾向にあります。
こうした環境下で、既存顧客との関係性を深め、LTVを最大化する手段としてカスタマーサクセスが注目されるようになりました。
カスタマーサクセスは顧客の成功を起点とした戦略であり、その実践の中でアップセル・クロスセルも重要な位置を占めます。
結果として、単なる売上拡大ではなく、顧客との中長期的な価値創出を重視した営業活動へとシフトが進んでいます。
なぜBtoBビジネスにおいて重要なのか?
1. 顧客獲得コストが高い
BtoBでは、一般的に購買決定に複数の部門や担当者が関与し、意思決定までに時間と労力がかかります。広告・人員・営業活動にかかる新規開拓コストは高騰傾向にあり、ROI改善の観点からは、既存顧客へのアップセル・クロスセルが非常に効率的です。
2. 長期的な契約が前提
BtoBビジネスでは、多くの場合1年~数年にわたる契約期間が設定されており、契約更新や利用定着のタイミングで、顧客ニーズの変化に応じた提案が自然に行えます。初期導入からのステップアップとしてのアップセルが組み込みやすい点が特徴です。
3. 信頼関係が構築しやすい
既にビジネスパートナーとしての取引実績があることで、顧客との間には一定の信頼関係が生まれています。そのため、新たな製品や上位プランの提案に対しても、押し売りではなく「価値ある提案」として受け入れられやすい土台があります。
アップセル・クロスセルの手法
アップセルを成功させるためのアプローチには複数の手法がありますが、共通して重要となるのは、顧客に対して 「上位の商品・サービスを選択することで、結果的により高い価値が得られる」あるいは 「わずかな追加投資によって、満足度の高い成果が得られる」 という心理に働きかけることです。
そのためには、顧客が上位グレードに興味を抱くための明確な“きっかけ”や動機付けが不可欠です。以下に、アップセルの代表的なきっかけづくりの方法をいくつかご紹介します。
成功する実践ポイント
1. 顧客のフェーズを見極める
- 導入直後に高額オプションを提案しても逆効果
- 導入効果が出始めたフェーズで提案する
2. ユースケースに基づく提案
- 「御社の使い方ならこの機能が合います」
- 「〇〇社ではこのプランに切り替えて業務効率が20%向上しました」など具体性が鍵
3. カスタマーサクセスとの連携
- 顧客の利用状況や満足度データをもとに、最適なタイミングと内容で提案する
4. 提案時は「顧客視点」を忘れない
- 収益向上ではなく、「顧客価値の最大化」が目的であることを明確にする
アップセル・クロスセルはいずれも、単なる売上拡大手法ではなく、顧客にとっての価値や満足度を高めるためのアプローチです。ご紹介したような施策を適切なタイミング・顧客心理に沿って活用することで、自然な形で提案が受け入れられ、LTVの最大化につながります。今後の営業活動においては、新規獲得と並行して、既存顧客との関係性を深める施策としてアップセル・クロスセルを戦略的に組み込むことが重要と言えるでしょう。
よくある失敗例と注意点
~アップセル・クロスセル施策における提案判断の考え方~
アップセル・クロスセル施策を実施するうえで、最も重要な前提となるのは、顧客との信頼関係を損なわないことです。
既存顧客からの売上拡大は、新規顧客の獲得に比べてはるかにコスト効率が良く、営業戦略としても非常に有効です。しかし、提案のタイミングや姿勢を誤ると、顧客から「押し売り」と受け取られ、関係の悪化や解約リスクを招く可能性があります。
とくにサブスクリプション型ビジネスなど、継続的な関係性と顧客満足が成果に直結するモデルでは、単なる売上拡大を目的とするのではなく、ライフタイムバリュー(LTV)の最大化を見据えた“顧客視点”の提案設計が求められます。
また、提案そのものが顧客にとって魅力的でなければ、かえって満足度を下げ、信頼を損なう要因にもなりかねません。
「本当に価値があるか」「納得感・お得感があるか」という視点で、事前に十分な吟味が必要です。
提案すべきか迷ったら?判断のためのフローチャート
ここで、アップセル・クロスセルの提案を行うべきかどうかの判断基準を整理した、可否判断フローをご紹介します。
以下のフローチャートを活用することで、顧客の状況に応じた適切な提案可否を見極めやすくなります。
提案活動における注意点まとめ
- 顧客が現在のサービスを十分に活用していない段階での提案は避ける
- 自社都合が前面に出た提案は、信頼を損なうリスクがある
- アップセルとクロスセルの違いを混同せず、目的に応じて整理する
- 顧客の業務成果や課題解決に直結する内容であるかを常に確認する
- 提案内容に“お得感”や“納得感”があるか、顧客視点で再点検する
お客様との“Win-Win”な関係構築を目指して
アップセル・クロスセルは、企業にとって収益性を高める手段であると同時に、お客様にとってのメリットがなければ成立しない施策です。
成果をあげている企業ほど、決して押し売りに頼ることなく、「この提案の方が価値がある」「長期的に見てお得だ」とお客様自身が感じられる設計やトーク設計を丁寧に行っています。重要なのは、お客様の成功にしっかりとコミットする姿勢を持ち、そのうえで最適なサービスを提案すること。これこそが、顧客との信頼を深め、継続的な関係を築く第一歩です。
ぜひ、アップセル・クロスセルという営業手法を、「売上拡大」ではなく、「顧客とのWin-Winを実現するための手段」として、戦略的にご活用ください。
営業代行会社として、私たちは貴社のアップセル・クロスセル施策の設計から実行支援までを一貫してご支援いたします。
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