決裁ブレーキポイントの正体 登録支援機関が見落とす企業の本音

外国人材の受け入れ支援をしていると、企業から「助かっています」「これからもお願いします」といった前向きな言葉をいただく機会は少なくありません。

一方で、その言葉の奥にある担当者の本音に触れる機会は、意外と限られます。表向きは前向きでも、検討の過程では
「受け入れたあと、運用がちゃんと回るだろうか」
「何か起きたとき、社内でどう説明すればいいだろう」
といった不安が残ったまま、決裁が進んでいることもあります。

特に人事・総務担当者が気にしているのは、「採用できるか」よりも「受け入れたあと、現場と制度の運用を継続できるか」という点になりやすいです。

この前提を共有しないまま制度説明や支援メニューの紹介だけを進めると、企業との間に小さな温度差が生まれ、後から「こんなはずでは…」につながることもあります。

ここでは、登録支援機関が見落としやすい企業側の本音を、5つの切り口で整理します。

企業は“コスト”よりも“手間”を気にしている

最初に押さえておきたいのは、企業が慎重になるのは「乗り気じゃないから」というより、日々の運用にのせたときの負担が読みにくいから、という点です。そう感じるのも無理はなく、特に人事・総務は“すでに回っている業務”の上に、新しい対応を追加する立場になりやすいからです。

企業が口にするのは「費用」でも、気にしているのは「回るかどうか」

商談では
「費用感がネックで…」
「予算が厳しくて…」
といった言葉が出ることが多いです。

ただ、実務の感覚としては、多くのケースで金額そのもの以上に「受け入れ後に増える作業・確認・調整を、今の体制で回せるか」 が不安の中心になりやすいです。

担当者の頭の中では、たとえばこんな想像が起きがちです。

  • 書類や期限管理が複雑になり、抜け漏れが心配
  • 入管手続きで不備が出た場合、どこまで対応が必要か見えにくい
  • 現場から「教える負荷が増えた」と声が上がりそう
  • 生活面の相談(寮・交通・病院など)が担当窓口に集まりそう
  • 何か起きたときに、社内へどう説明するか不安が残る

ここで重要なのは、「作業量が増えるか」だけではなく、
“対応や調整が担当者に集中しやすいのでは” という想像がセットになっていることです。

担当者の能力ではなく、体制上そうなりやすい

この不安が大きくなるのは、担当者個人の姿勢というより、体制上の事情で起こりやすい面があります。

中小企業では、人事・総務担当が
採用/労務/社内調整/総務/場合によっては経理
を兼任していることも珍しくありません。そこに外国人材受け入れが加わると、「新しい制度対応」をいつもの業務と並行して進める必要が出てきます。

また、外国人材の受け入れは初めてという企業も多く、制度や手続きの情報量が一度に入ってくるため、“何を・いつ・誰がやるのか”が整理されるまで、負担が大きく感じられやすいです。

サービス説明より先に“運用像”を一緒に整える

ここで効果的なのは、支援内容を網羅的に説明することよりも、「企業側の作業がどれだけ減るのか/何が残るのか」を先に共有することです。

たとえば、提案段階で以下のように運用設計を示せると、安心の根拠になりやすいです。

  • 在留期限・更新スケジュールは支援機関側で一元管理し、事前にリマインド
  • 入管提出書類は支援機関側で作成し、企業は確認・押印に集中できる形にする
  • 必要書類は台帳化し、「誰が・いつまでに・どこへ」を見える化して運用する
  • トラブル時の初動は支援機関側も同席・一次対応し、企業単独で抱えない形を整える
  • 現場向けの説明資料やルール(注意事項、禁止事項、指示の出し方)を共同で整える

ポイントは「全部できます」と広げるより、“企業側で増える作業は、ここまで” と負担を限定して見せることです。担当者にとっては、作業が増えること以上に「全体像が見えない状態」が不安になりやすいので、範囲が明確になるだけでも検討が進みやすくなります。

不安になりやすい点を先回りして整理する

企業担当者が特に気にしやすいのは、次の2点です。

  • 手続きや期限に抜け漏れが出ないか
  • 現場の調整やトラブル対応が、担当者に集中しないか

この2点について、更新管理の方法や、トラブル時の連絡ルート・初動フロー(誰が・いつ・どう動くか)を先に共有しておくと、企業側の不安は整理されやすくなります。

企業側が見ているのは「費用が安いか」だけではなく、運用として回るかです。
支援機関が企業と一緒に“運用の形”を具体化できるほど、決裁も現場運用も進みやすくなります。

企業は“コミュニケーションの壁”を強く気にしている

外国人材の受け入れを検討する場面で、企業の担当者から「日本語はどれくらいできますか?」と聞かれることは少なくありません。

この質問は、日本語能力を厳密に評価したいというよりも、「現場での指示や教育が、今のやり方で無理なく回るだろうか」 を確認したい気持ちの表れであることが多いです。そう感じるのも自然で、現場業務では伝達の行き違いが、品質・安全・クレームに影響しやすいためです。

企業側が抱きやすい不安のイメージ

特に製造・介護・飲食・宿泊など、現場作業が中心の業種では、次のような点が気にされやすくなります。

  • 作業指示が正しく伝わらず、手戻りが増えないか
  • 注意した意図がうまく伝わらず、誤解が生まれないか
  • クレーム対応時に、状況説明が難しくならないか
  • 同じ説明を繰り返す負担が、現場に集中しないか

現場リーダーの立場で考えると、
「伝えたつもりだった」
「悪い意味ではなかった」
といったズレが積み重なっていく状況を、事前に想像してしまうこともあります。

企業が気にしているのは、日本語が完璧かどうかというより、“伝達のズレが日常業務の負担にならないか” という点です。

言語だけでなく、教育の仕組みが影響しやすい

企業側では「日本語レベルが不安」という言葉で語られることが多いですが、実際には日本人同士の現場でも、

  • 教え方が人によって異なる
  • マニュアルが十分に整っていない
  • 教育担当が固定されていない

といった状態で業務が回っているケースも少なくありません。

そこに外国人材が加わると、言語の違いだけでなく、教育や伝達のばらつきが見えやすくなり、「コミュニケーションが難しい」という印象につながりやすくなります。

語学ではなく“伝わる前提”を一緒につくる

この不安に対して支援機関ができるのは、日本語能力の説明を重ねることではなく、「このやり方なら現場が回りやすい」という前提を、企業と一緒に整えることです。

たとえば、次のような支援は実務に結びつきやすいです。

  • 写真・イラストを使った視覚的マニュアルを一緒に整える
  • 入社後1か月・3か月の到達目標を整理した育成表を用意する
  • 現場リーダー向けに、外国人材への教え方のポイントを共有する
  • 指示語・禁止事項・安全ルールを共通化し、伝達のブレを減らす
  • 翻訳アプリやツールを選定し、現場での使い方まで確認する

重要なのは、「日本語が上達します」という約束よりも、「この仕組みなら、現場の負担が増えにくい」 と具体的にイメージできることです。

ズレを小さいうちに拾う仕組み

コミュニケーションの行き違いは、早い段階で気づけるほど調整しやすくなります。

  • 本人と現場、双方からの定期的なヒアリング
  • 小さな誤解や違和感の整理・翻訳
  • 感情がこじれる前のすり合わせ

こうした接点を、支援機関が同じ立場で伴走しながら回すことで、「問題が起きてから対応する」状態を減らしやすくなります。

企業に伝わりやすい一言

企業側の不安を和らげやすいのは、次のような言い回しです。

「日本語の問題というより、御社の現場が混乱しにくい伝え方や教え方を、一緒に整えていきましょう」

この一言があるだけで、話題は
「外国人材の語学力」から
「自社の運用設計」
へと自然に移りやすくなります。

企業が気にしているのは言葉そのものではなく、現場の負担が増えないかどうかです。
登録支援機関がコミュニケーションを「語学」ではなく「仕組み」として企業と一緒に整えられるほど、受け入れへの心理的ハードルは下がっていきます。

企業は“採用の成立”よりも“定着の見通し”を重視しやすい

外国人材の受け入れを検討する際、支援機関側では「採用が決まるかどうか」に意識が向きやすい一方で、企業側では「採用したあと、安定して続いてくれるだろうか」という点が判断の軸になりやすいです。

そう考えるのも自然で、採用は一度きりの出来事ですが、定着は日々の運用に関わるテーマだからです。

企業側で不安になりやすいポイント

外国人材が短期間で離職してしまうと、企業側では単に人手が減るだけでなく、

  • 採用や調整にかけた時間
  • 現場への説明や合意形成
  • 教育に割いた工数
  • 社内への説明や振り返り

が、もう一度必要になることがあります。特に担当者の立場では、「この判断でよかったのか」を問われる場面が出てくるため、定着への不安が強くなりやすいです。

そのため企業は、「まずは少人数から」「様子を見ながら」という選択を取りやすくなります。

定着は“仕事以外”の要素も影響しやすい

離職理由は「仕事が合わなかった」という一言で片づけられることもありますが、実際には複数の要素が重なって起きるケースが多いです。

  • 業務:仕事内容の難易度、評価のされ方、成長実感
  • 生活:住居、金銭、健康、交通、行政手続き
  • 人間関係:現場との相性、文化的な違い、同国人同士の摩擦

企業側では業務以外の領域に直接関わる経験が少ない場合もあり、「どこでつまずいているのか」が見えにくくなることがあります。見えにくいほど、不安は大きくなりやすいです。

定着を“感覚”ではなく“状態”として共有する

企業が安心しやすいのは、「大丈夫です」といった言葉よりも、「どのタイミングで、何を確認するのか」 が整理されていることです。

たとえば、次のような形で定着を“状態”として扱うと、企業側も状況を把握しやすくなります。

  • 業務理解度やミス傾向を、簡単なチェックシートで定期確認
  • 生活面の相談を受け付ける窓口(チャット・電話)を設ける
  • 本人・現場双方から、定期的にヒアリングの機会を持つ
  • 変化があった場合は早めに共有し、調整の選択肢を増やす

こうした仕組みがあることで、「何か起きたときに初めて知る」状態を減らしやすくなります。

定着しやすい現場に共通する考え方

定着が比較的安定している現場では、次のような点が整理されていることが多いです。

  • 期待されている役割や業務範囲が明確
  • 評価やフィードバックの基準が分かりやすい
  • 困ったときに相談してよい相手が分かっている
  • 生活面・業務面の両方で、支援の窓口が見えている

これらは特別な取り組みというより、少しずつ整えていける要素です。支援機関が関わることで、企業と一緒に設計しやすくなります。

企業に伝わりやすい一言

定着に関する説明では、次のような言い回しが企業側に受け入れられやすいです。

「採用はスタートなので、続いているかどうかを一緒に確認しながら運用していきましょう」

この一言があると、支援機関は
「人を紹介する役割」から
「継続運用を支えるパートナー」
として認識されやすくなります。

企業が見ているのは人数ではなく、運用として続くかどうかの見通しです。
定着を“一緒に確認し、必要に応じて整えていく”支援があることで、企業側も前向きに判断しやすくなります。

企業は“責任の所在”を事前に整理したがっている

外国人材の受け入れを検討する際、企業の担当者が表立って口にしにくいものの、判断に大きく影響しやすいのが「何か起きたとき、社内でどう説明し、どう動けばいいのか」という点です。

これは「責任を負いたくない」という意味ではなく、責任や対応の流れが見えないままでは、決裁を進めにくい という、実務上の感覚に近いものです。そう感じるのも無理はありません。

企業側で想定されやすい不安の例

担当者の立場で考えると、次のようなケースが頭をよぎりやすくなります。

  • 失踪や急な離職が起きた場合、どこまで対応が必要なのか
  • 入管手続きに不備が見つかったとき、誰がどこまで関わるのか
  • トラブルが外部対応や行政対応に発展した場合の動き方
  • 現場との調整が続いたとき、社内でどう説明すればよいか

ここで重く感じられやすいのは、トラブルそのものというより、「判断した担当者に説明や調整が集中しそう」という見通しです。

特に外国人材の受け入れは、企業によっては前例が少なく、「これまでどうしていたか」を参照しにくい分、慎重になりやすいテーマでもあります。

責任が曖昧なままだと、判断が止まりやすい

実務の現場では、次のような点が整理されないまま検討が進むことがあります。

  • 入管関連手続きについて、支援機関と企業の役割分担
  • 生活トラブルが起きた際の対応範囲
  • 何かあったときの連絡先や初動の流れ
  • 社内外への情報共有の方法

これらが曖昧なままだと、担当者としては「進めたい気持ちはあるが、説明材料が足りない」状態になりやすく、結果として判断が慎重になります。

責任と役割を“一緒に整理する”

企業側が安心しやすいのは、「何が起きたら、誰が、どう動くか」 が事前に共有されていることです。

たとえば、提案段階で次のような点を整理できると、社内説明もしやすくなります。

  • 支援機関が担う範囲(書類作成、面談、生活支援など)
  • 企業側が判断・決定するポイント(雇用条件、配置、評価など)
  • トラブル時の初動フロー(連絡先、同席の有無、対応目安)
  • 情報共有の方法(誰に、どの頻度で、何を共有するか)
  • 失踪・離職が起きた場合の基本的な対応方針

重要なのは、「任せてください」と引き取ることではなく、役割と対応の線引きを、企業と一緒に言語化することです。

企業にとっての安心材料は“姿勢”

責任の話題は扱いづらい分、避けられてしまうこともあります。
ただ、あらかじめ触れてもらえることで、

  • 現実的な前提で話してくれている
  • 問題が起きたときも一緒に考えてくれそう

という印象につながりやすくなります。

支援機関としての対応範囲や限界を含めて共有する姿勢は、「現場を一緒に回すパートナー」としての信頼につながります。

企業に伝わりやすい一言

責任に関する説明では、次のような言い回しが受け入れられやすいです。

「万が一のケースも含めて、どう動くかを事前に整理しておきましょう。判断や説明を一人で抱えなくていい形を、一緒につくれればと思います」

この一言があると、企業側は「責任を押しつけられるのでは」という警戒から、「一緒に進められそうだ」という感覚に切り替えやすくなります。

企業が気にしているのは、外国人材そのものではなく、判断したあとに、運用と説明がきちんと回るかどうかです。
責任や役割を事前に整理し、共有できる支援機関ほど、決裁を通しやすい存在になっていきます。

企業は“制度の複雑さ”に不安を感じやすい

特定技能、技能実習、技人国、在留資格、更新、届出、行政書士……。
登録支援機関にとっては日常的な言葉でも、企業側から見ると情報量が一気に増える領域です。

企業担当者が制度の説明を聞きながら感じているのは、「理解できない」というよりも、「この情報を、自社の判断と運用にどう落とせばいいのか分からない」という戸惑いに近いことが多いです。そう感じるのも自然で、制度の話は実務との距離が見えにくくなりやすいからです。

企業側で起こりやすい感覚

制度の説明を受ける中で、担当者は次のような点で立ち止まりやすくなります。

  • 在留資格の種類が多く、全体像をつかみにくい
  • 似た名称の書類が多く、何が重要なのか判断しづらい
  • 更新や届出のタイミングが複雑に見える
  • 万が一ミスがあった場合の影響が読み切れない

ここで大切なのは、「制度が難しいから受け入れたくない」のではなく、「判断材料が整理されていないと決めきれない」という状態になりやすい点です。

企業は制度をすべて理解したいわけではありません。
多くの場合、

  • 自社に関係する部分はどこか
  • いつ、誰が、何をすればよいのか
    が分かれば、判断しやすくなります。

制度説明が“実務のイメージ”につながりにくい

支援機関側では、正確さを重視するあまり、

  • 制度の背景や成り立ち
  • 法律上の区分
  • 1号・2号といった細かな違い

から説明に入ることがあります。

一方、企業側の頭の中では「つまり、自社では何が発生するのか」
という問いが残りやすく、ここが結びつかないと「難しい話を聞いた」という印象だけが残ってしまいます。

制度知識と企業の実務が、まだ線でつながっていない状態です。

制度を“企業の運用”に翻訳する

企業が安心しやすいのは、制度の解説そのものよりも、自社に当てはめた運用の流れが見えることです。

たとえば、次のように言い換えるだけでも、理解は進みやすくなります。

  • 「特定技能1号・2号」
     →「最初の◯年は育成と定着を固める期間。その後は、より安定した運用を目指す段階」
  • 「在留資格の更新」
     →「この時期に、支援機関側で準備を進めます。御社は確認と押印をお願いする形です」
  • 「届出義務」
     →「変更があった場合、この内容だけ共有いただければ、あとはこちらで整理します」

こうした説明があると、制度は「判断しにくいもの」から「運用の流れとして想像できるもの」
に変わりやすくなります。

企業が求めているのは“理解”より“管理の見通し”

企業側は、制度を完全に把握したいというより、「制度対応が、日常業務の中で破綻せずに回るか」を気にしています。

  • 期限を忘れずに管理できるか
  • 書類の不備が起きにくいか
  • 注意が必要なポイントを事前に知れるか

これらを支援機関と一緒に管理できる見通しが立つと、制度への心理的ハードルは下がりやすくなります。

企業に伝わりやすい一言

制度に関する不安を和らげやすいのは、次のような言い回しです。

「制度全体を理解していただく必要はありません。御社の業務に関係する部分だけ、分かる形に整理して一緒に進めていきましょう」

これは説明を省くという意味ではなく、判断と運用を支援機関と共同で行う、という姿勢の共有です。

制度そのものは今後も一定の複雑さを保ち続けます。だからこそ、登録支援機関に求められるのは、制度を“分かりやすく説明すること”以上に、企業の運用に落とし込み、一緒に管理していくことです。

企業が求めているのは知識量ではなく、「このパートナーとなら、整理しながら進められそうだ」という安心感。本質は、制度ではなく判断しやすさと運用の見通しを整えることにあります。

企業は拒否しているのではなく、“不安の整理”を求めてい

企業が慎重になる場面を丁寧に見ていくと、拒否というより「運用の見通しが立つまで、判断を保留したい」という状態に近いことが多いです。

  • 手間が増える不安
  • 現場の伝達・教育が崩れないかという不安
  • 定着しない不安
  • 何かあったときの説明・対応の不安
  • 制度の情報量に対する不安

登録支援機関に求められているのは、書類代行だけではなく、運用・定着・責任設計を、企業と一緒に整えていくことです。

この5つのポイントを「伴走の形」で具体化できる支援機関は、企業にとって“決裁を通しやすく、運用を回しやすいパートナー”として選ばれやすくなります。

差別化の軸は、制度知識の量だけでなく、企業が前に進める形に整理し、共につくる力にあります。


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